東京科学大学 総合研究院 難治疾患研究所
未来生命科学研究部門
恒常性医学分野
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Department of Homeostatic Medicine
Medical Research Laboratory, Science Tokyo
恒常性医学分野について
生体の恒常性維持には、各器官を構成する多様な細胞のクロストークや多臓器間ネットワークが重要な役割を果たします。 本研究室では、ライフステージ・ライフイベントでおこる体の生理変化への適応のために各組織・臓器がリモデリングするメカニズムと、その生理機能について解析しています。 体の恒常性維持のための生体応答機構を1細胞レベルで理解し、医療への応用を目指します。
Recent Achievement
妊娠期における母体肝臓リモデリングは母体の糖代謝と胎児発生に重要である
Periportal hepatocyte proliferation at midgestation governs maternal glucose homeostasis in mice
妊娠期には、胎児の発生に必要な環境を整えるため、母体の様々な臓器がリモデリングされます。特に肝臓は顕著に肥大化することがげっ歯類やヒトで報告されており、妊娠における母体の代謝変化との関連が予想されていました。今回私たちは、妊娠マウスにおいて肝細胞の増殖が時空間的に制御されていることを見い出しました。すなわち、妊娠中期には門脈域の肝細胞が一過的に増殖し、妊娠後期には中心静脈域の肝細胞の増殖が昂進することがわかりました。また、妊娠中期でみられる門脈域の肝細胞増殖が、妊娠期後期における血糖制御因子の遺伝子発現に必要であり、この増殖を抑制すると、肝臓グリコーゲン貯蔵の低下、血糖値の上昇、胎盤グリコーゲンの過剰蓄積、胎児の巨大化といった妊娠糖尿病様の症状が誘導されました。さらに、妊娠中期の門脈域肝細胞増殖に必要な因子を特定としてHmmrを特定し、Hmmrの発現を抑制すると妊娠糖尿病様の症状が誘発されることを見出しましたた。これらのことから、妊娠の比較的早い段階で起こる母体肝臓リモデリングが、妊娠後期における母体の糖代謝制御に重要であることが示されました。
Kozuki et al.,
Commun Biol
2023
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血管減少による真皮の硬化が表皮幹細胞の加齢変容を誘導する―皮膚老化メカニズムの一端を解明―
Vasculature atrophy causes a stiffened microenvironment that augments epidermal stem cell differentiation in aged skin
皮膚は外界から体内を守るバリアとして機能する重要な組織です。皮膚のバリア機能の維持には表皮の新陳 代謝が必須であり、これには表皮幹細胞※1の増殖と分化の制御機構が要となります。加齢によって表皮幹細胞 の機能は低下しますが、その原因はよく分かっていません。本研究では、生体イメージング、1細胞解析技術、遺伝子改変マウスを用いて、加齢による真皮の硬化が表皮幹細胞の機能低下の一端となること、さらに 真皮の硬化は体表血管の減少によって誘導されることを明らかにしました。本研究の成果は今後のアンチエイ ジング技術の開発に貢献すると考えられます。
Ichijo et al.,
Nat Aging
2022
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皮膚拡張時における増殖能の高い表皮幹細胞の出現には血管が重要であることを発見
Vasculature-driven stem cell population coordinates tissue scaling in dynamic organs
皮膚は、体の生理変化や体形変化に応じて拡張・収縮するダイナミックな臓器です。これまでに私たちは、急速に拡張する妊娠期の腹部皮膚において、表皮幹細胞から増殖性の高いTbx3陽性の基底細胞が産生されることを見出し、この細胞群の出現は真皮のaSMA
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Vimenin
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細胞が分泌するIgfbp2などの液性シグナルに依存することを報告しました。今回、Tbx3
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基底細胞は周囲の細胞にADAM8の発現を誘導し、EGF-ERKシグナルを活性化して表皮増殖クラスター(EPC)を形成することが明らかになりました。また、妊娠期では腹部皮膚で血管新生が観察され、Tbx3
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基底細胞の出現が血管新生に依存することを明らかにしました。これらの結果から、血管が真皮と表皮のリモデリングを誘導し、体表領域や生理変化に合わせた皮膚の形態や伸展を制御していることが明らかとなりました。これらの成果は皮膚の再生医療に貢献できると考えられます。
Ichijo et al.,
Sci Adv 2021
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